ステイホームや非接触型販売の追い風も受け、急速に広がりを見せるビューティーテックですが、その種類は大別すると2つに分けることができます。

ノルディックイノベーションハウス東京(NIH 東京) Meet our Members。今回は、今年春に日本での活動を始めたフィンランドのビューティーテックスタートアップ、リヴィーブ(Revieve)です。

ステイホームや非接触型販売の追い風も受け、急速に広がりを見せるビューティーテックですが、その種類は大別すると2つに分けることができます。

一つは、高性能ヘアドライヤーやフェイス用スチーマーなどの美容家電で、それ自体が消費者向け商品のもの。もう一つは、AIやビッグデータ、ARなどの技術をベースとした、自分に合うビューティー商品をデバイス上で選んだり試したり購入できたりするアプリやツール。

リヴィーブのソリューションは後者にあたり、スキンケアやメイクアップ、さらにはヘルスケアやウェルネスの分野において、よりパーソナライズされた消費体験を提供することを目指してます。

同社の日本リージョン責任者、森悠祐氏にお話を伺いました。

美容、パーソナライズ消費、プラットフォーム

NIH:本日はお時間いただきありがとうございます。まずは御社の事業内容やビジョンをお聞かせいただけますか?

森氏:私たちは、美容業界において、パーソナライズされた消費体験を提供するためのプラットフォームを作ることをビジョンとしています。

少し噛み砕いて説明しますと、まず美容には、スキンケア、ヘルスケア、ウェルネスの3つの柱があると考えています。肌の健康には身体全体の健康状態が関係するし、身体の健康状態には精神状態を含めた総合的な健康状態も関わってきます。

なぜパーソナライズされた消費体験にこだわるのかと言いますと、そもそも、美容商品はパーソナルなものだからです。例えば人の肌の状態は、年齢、性別だけでなく、ライフスタイル、置かれている状況、住んでいる場所の気候など、様々なファクターにより変わるもので、求められる商品は一人一人違って当然なのです。

でも、数多あるスキンケア商品の中から、今の自分の肌に合った商品を見つけることが難しい場合もあります。リヴィーブはこの状況を解決するために、消費者が本当に自分に合う商品を見つけ、更なる美を追求したり、健康状態を改善したりしていくためのプラットフォームを作っていきたいと思っています。

現在展開中の商品「スキンケアアドバイザー」に加え、今後は髪の毛を診断する「ヘアケアアドバイザー」や、栄養面からサプリメント等をアドバイスする「ニュートリションアドバイザー」、「ヘルスケアアドバイザー」、さらに「グルーミングアドバイザー」などの商品も発表していく予定です。

スキンケアアドバイザーのデモ動画:

日本は、美容リテラシーが高い

NIH:リヴィーブはフィンランドで誕生し、U.S.その他にも拠点がありますね。日本進出はどのような経緯で実現したのでしょうか?

森氏:創業者Sampo Parkkinen が、スキンケアについて悩みを抱えていたことが創業のきっかけだったのですが、その際に彼がU.S.で生活していた関係で、U.S.にも拠点を構えて事業展開をしてきました。

今はフィンランドに本社、スペインに研究開発拠点を起き、今年2021年、日本そして台湾で活動をはじめました。APACは今後も事業展開を進めていく予定の地域です。

日本のブランドとは創業当初からグローバル市場で取引があったことから、Sampoも特別な思い入れがあります。

実際、リヴィーブのビジョンと日本の消費者のマインドは、親和性が高いと感じています。というのは、日本では一般的に、スキンケアの基本は素肌で、メイクもナチュラルメイクが重視されます。内面から美しくなりたいというインナービューティーの概念も比較的浸透しています。スキンケアからヘルスケア、そしてウェルネスまでを一つの流れとして捉えている私たちのビジョンと、通じるものがあります。

マーケットによっては、ビューティーテックと言うと、まずバーチャルメイキャップの話になるところもありますが、日本では素肌をより良い状態にするために最新テクノロジーを使う、という意識が浸透しているのだと思います。

例えば、日本のステークホルダーと商談をしていると、どのような情報を元に肌を「健康」と判断しているのか、栄養学的な知見はどのように蓄積するのか、など、技術的な質問を大変よく受けます。翻って、他のマーケットでは、いかにゲーミフィケーションで購買を掻き立てることができるのか、バーチャルでありつつも魅力的に商品を見せていくか、などの話題が中心となるそうです。もともと、日本の化粧品業界はR&Dに大変力を入れており、ライフサイエンスにかなり近いという素地が、リヴィーブにとっても大変興味深く魅力的なマーケットを形成しています。

Win-winのパートナー探し

NIH:日本での現在の主な活動を教えてください。

今は、化粧品ブランドやリテーラーへの取り組みを進めていくことと同時に協業先企業様との連携の2軸で動いています。

後者にはまだ公表できない案件もあるのですが、最近発表した中では、株式会社GLC様との提携と、日本におけるサービスの向上を図るため日本人のアドバイザリーボードを迎え入れたことが挙げられます。

GLCは、リモート接客などの場で導入されている大型タッチパネルディスプレイ、Smart Mirrorを開発しています。GLCにとっては、Smart Mirrorにリヴィーブの技術をモジュール的に追加することで、美容業界へのアプローチがより容易になります。またリヴィーブにとっては、GLCが持つEコマース、BOPIS (buy online pickup in store)、オムニチャネルコマースに関する知見が、今後の事業展開においてとても役に立つと考えています。相互補完のwin-winの関係ができ、嬉しく思っています。

今後同様に様々な企業様と日本やAPAC市場におけるアライアンス構築を模索しております。

また今回アドバイザーボードに加入いただいた加藤氏、伊達氏に関しましては、日本におけるテクノロジー導入やビジネス環境への対応などローカル化を進めていくための第一歩と考えており、今後リヴィーブの日本市場における体制の拡大も進めていきます。

リヴィーブの強み

NIH:リヴィーブのソリューションは、世界にも日本にも競合が存在する分野だと思います。強み、競争優位性はどんな点でしょうか?

森氏:大きく三つあると思います。

まずは、リヴィーブのソリューションがホワイトレーベルであり、プラットフォームとしてどのブランド、企業にも使っていただけるものであること。

次に、美容業界で中立な立場であること。大手ブランドの中では自社独自で同様のプラットフォームを開発しているところもありますが、いわゆるコンビュータービジョンと言われるセルフィー画像から肌を分析してデータを蓄積する部分やレコメンド機能など、多くの部分は共通化できます。リヴィーブが提供しているのはこの共通化できる部分で、同様のサービスを展開する際には必ず必要になる部分です。計測データの細かい解釈やリコメンドする商品属性などの部分は、ビルドオンでカスタマイズしていただけるので、全体として独自性のあるものを構築いただけるようになっています。ちなみに計測データはすべて匿名化されるので、個人データ保護の観点からの心配もありません。

三つ目が、当社のコンピュータービジョンの信頼性です。当社はExecutive boardと言われるメンバーにも皮膚科医がいて、研究開発には大変力を注いでいます。例えば、被験者約50人に対して、リビィーブの肌診断結果と皮膚科医の診断結果がどのように合致または乖離しているか、などの実験も行なっています。ビューティーテック業界の動向レポートや記事なども、多数発表しています。

NIH:今後、日本で、日本人の肌や体質に特化したような研究開発を進めていく予定はありますか?

森氏:はい、今後積極的に可能性を探っていきたい分野です。

日本とフィンランド、ビジネス文化の相違点

NIH:森さんは、フィンランド、北欧企業で働くのは初めてだと伺いました。働いてみて、ビジネス文化の違いなど感じますか?

森氏:個人的に米国企業やインド企業で仕事をしてきた今までの経験と比較すると、リヴィーブの仲間はチームワークを重視したり、チームメイトの意見に耳を傾ける文化があると思います。そういう意味では、日本に似たビジネス文化があると感じています。

逆に、日本と違うところと言えば、同じ「チーム」と言っても日本は縦列型、フィンランドはとてもフラットで皆対等だと感じています。わたしもHQの経営陣とフラットな関係でいるからこそ、コミュニケーションもスムーズに、意思決定も早く出きているのだと思います。

あと、従業員の多様性も日本と違うところかもしれません。フィンランドのスタートアップは、born globalと言って、創立当初から世界進出を目指すことが多いため、従業員の国籍も多岐にわたることが多いのですが、リヴィーブはフィンランド人がたったの25%、残り75%は他国籍。スタートアップの中でも従業員の外国籍率が高いと思います。

NIH:今後の事業展開について教えてください。

森氏:まずリヴィーブをもっと多くの方に知ってもらうことが何よりだと思っています。そしてパートナーエコシステムを作っていくことも大事だと考えています。また、ローカライズや日本でのR&Dを含めて、より日本のユーザーに使っていただきやすい形での事業展開も考えています。そのためにも、リヴィーブの価値観を共有できるパートナーを、たくさん増やして行きたいですね。

NIH:本日はどうもありがとうございました。今後の日本での展開を非常に楽しみにしています!

ノルディックイノベーションハウス東京は、北欧5カ国のスタートアップ、スケールアップ、成長企業の日本進出を支援するコミュニティプラットフォームです。強力なコミュニティとネットワークを生かして、北欧企業と日本のステークホルダーを繋いでいきます。

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